能登半島地震の被災地に、キャンピングカーを製造・販売する岐阜県可児市の「トイファクトリー」が組み立てたトイレカー1台が派遣されている。水や薬品を使わずに排泄(はいせつ)物を処理でき、断水に悩む避難所でトイレ事情改善に貢献している。
車に積載しているのは、スイスのクレサナ社が開発したウォーターレストイレ。便器内にセットしたフィルムが自動的に排泄物を袋状に包んで密封し、汚物が漏れることはない。使用済みのおむつや生理用品も、そのまま捨てられる。フィルムは1度セットすれば、最大50回ほど使える。トイ社がキャンピングカー用に、昨秋から採用していた。
能登半島地震では、業界でつくる日本RV協会を通じてトイ社にも車両の派遣要請があり、これまでに応援の自治体職員の宿泊や休憩用などに、トイレカー以外のキャンピングカー6台を派遣した。
1月上旬、車両を運んだ社員が被災地で感じたのは、断水による避難所などの劣悪なトイレ環境だった。「くんである川の水で流すものの、くみ取りが追いつかない。臭いがひどく、衛生上の問題を感じた」と、トイ社岐阜店長の竹縄大樹さん(42)は話す。
トイ社は早速、4人のチームを立ち上げ、トイレカーの製作を始めた。専用のトイレカー開発は初めて。車体には、トイ社が昨夏、ハイエースをベースに公用車用に開発し、座席が着脱できて会議やイベント、移動投票所などに広く使えるマルチパーパスモビリティー(マルモビ)を使った。
後部にトイレの個室を2室設け、数日間の工事で、ドアや仕切り板などを据え付けた。
できあがった車両は、石川県珠洲市で約30人が過ごす避難所の公民館に派遣され、女性用トイレとして1月29日に稼働を始めた。今のところ好評で、社員が引き揚げた後も現地で問題なく使われているという。
トイ社には、他にもトイレカーの要望が寄せられているといい、個室が3室あるタイプや、トイレが簡単に着脱できて多用途に使える車両などを考案中だ。今回の課題を洗い出し、災害時には、一般の人がすぐに個室を組み立てられるような簡素なトイレカーをめざすという。(本井宏人)
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル